◆『もてなし上手』~ホスピタリティによる創客~ 第40回:平成26年5月1日掲載
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最後の詰めがおもてなし行動を活かす~「おもてなし行動」を経営に~
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「お客様のために」と、まるで錦の御旗のように言う人がいます。あるホテルの部屋に置かれていた総支配人からのメッセージカードには、本当にうれしく思い感動しました。いったいどれだけのカードにサインをされたのでしょう。
別のホテルでは、サインだけではなく筆文字で全文が書かれたメッセージカードもありました。「おもてなし」とは、その方のことを想い、その「想い」を行動に移して伝える行動を言います。その意味で、このカードに込められた想いはうれしく感じました。
しかし、もう一つ大切なことは「おもてなし経営」です。「おもてなし行動」を経営に結びつけなければ、その行動は、自己満足行動となってしまいます。
「無駄な行動」とは、その行動を無駄にしてしまっていることに気付かないことです。 |
部屋に置かれていたメッセージカードの発信者は総支配人。しかし、私は残念ながら、その総支配人にお逢いしたことがない。ホームページを見ても、どのページにも総支配人のお顔は載っていません。
ここに書かれた名前の総支配人は、果たして実在するのでしょうか。一枚一枚に本当に直筆でサインをしたのだと信じます。それほど手間を掛けたのに、その時間と手間が無駄になってしまっている。この無駄にした時間が「おもてなし経営」にとって最も厄介なのです。
本人は良い仕事をしたと思っているかも知れませんが、お客様にはその想いは伝わっていません。良い印象は持っても、次の宿泊の決定にはならない。執務室の中で数字を見ていてもお客様は創造できません。
旅館の女将さんも本当に大変な仕事を日々されています。毎晩遅くまで宴会場や部屋をまわって挨拶をされます。お客様もきっと喜ばれるでしょう。ただ、朝の出発の時に顔を見せない女将に、ガッカリして宿を後にするお客様は多いのです。
最後の詰めをしっかりしなければ、それまでの「おもてなし」が無駄になってしまいます。それが残念でなりません。もっと言えば、チェックアウトの時にお支払いをされるお客様がどんな顔でお支払いをされているのか。これを確認しなくて、「おもてなし」の向上などできるはずがありません。
チェックアウト時に、総支配人が「昨夜はゆっくりとおくつろぎいただけましたか。またのお越しをお待ちしております」。そんな声と笑顔で見送られたら、その瞬間にそのホテルは、私にとってきっと定宿となったことでしょう。素晴らしいホテルだけにそれが残念でなりません。朝の見送りは、「次」を決定づける最幸の瞬間なのです。 |

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